大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成5年(行コ)143号 判決

東京都豊島区南長崎二丁目一四番五号

控訴人

磯部俊行

右同所

控訴人

磯部千枝子

東京都北区西ケ原三丁目二番一-三〇四号

控訴人

磯部繁通

右同所

控訴人

磯部智子

右控訴人ら訴訟代理人弁護士

大平恵吾

碓井清

東京都豊島区西池袋三丁目三三番二二号

被控訴人

豊島税務署長中野武彦

右指定代理人

門西栄一

藤村泰雄

内倉裕二

渡辺進

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求める裁判

一  控訴人ら

原判決を取り消す。

被控訴人が控訴人らの昭和六三年一月一五日相続開始にかかる相続税について平成二年一月三一日付けでした各再更正及び過少申告加算税賦課決定について

1  控訴人磯部俊行に対する再更正のうち課税価格四六三三万九〇〇〇円、相続税額一二三〇万四二〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定

2  控訴人磯部千枝子に対する再更正のうち相続税額一四一九万七二〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定

3  控訴人磯部繁通に対する再更正のうち相続税額五八六八万一八〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定

4  控訴人磯部智子に対する再更正のうち相続税額九四六万四八〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文第一項同旨

第二事案の概要

次に付け加えるほか、原判決「事実及び理由」の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

一  原判決書三枚目表五行目から六行目にかけて「八七六番二所在の宅地(以下「本件土地」という。)」を「八七六番二田四一平方メートル外五筆の土地(合計六筆二、一四九平方メートル。当時の地目はいずれも田であったが、後記本件売買契約時までに地目変更及び合筆がされて同所八七六番二宅地二、一五〇・七八平方メートルとなった(甲八号証)。以下「本件土地」という。)」に改める。

二  同三枚目裏九行目中「三億六〇〇〇万円」の次に「が一旦ダイワエンタープライズに返還され(乙二号証の六)、それ」を加える。

三  同六枚目表八行目中「主張」を削る。

第三証拠

原審並びに当審における本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

第四争点に対する判断

当裁判所も、控訴人らの請求は理由がないからこれを棄却すべきであると判断する。その理由は、次に付け加えるほか、原判決「事実及び理由」の「第三 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

一  原判決書一四枚目裏二行目中「ダイワエンタープライズでは、泉総合ファイナンスから」を「ダイワエンタープライズは泉総合ファイナンス株式会社のため本件土地につき債権額を五億五〇〇〇万円とする抵当権設定登記を経由して同会社から」に改める。

二  同一五枚目表三行目から四行目にかけて「扱うものとされ、また、代金額等も当初契約と同様とされた。」を「扱うものとされた。」に改め、一五枚目表五行目から一六枚目表三行目までを次のとおり改める。

「代金額は、当初契約と同様、総額八億円、内訳は土地が一億二九三六万九八〇〇円、家屋が六億七〇六三万〇二〇〇円とされた。その支払については、まず手付金三億六〇〇〇万円を右契約の日に支払い(ダイワエンタープライズから既に三億六〇〇〇万円が支払われていたことから、右同日これを一旦ダイワエンタープライズに返還した上、幸子がダイワエンタープライズから同額の借入れをし手付金としてスペースクリエートに支払った形にして処理した。)、中間金二億八〇九〇万円は昭和六三年一月二〇日までに支払うこととし、客室内装工事代等一億二九一〇万円は出来高払とし、残金三〇〇〇万円は本件建物の完成、引渡し後七日以内に支払うこととされた。そして、本件家屋の引渡時期は昭和六三年四月二五日までとされ、また特約として、右中間金の支払い時に売主は買主に本件家屋の表示登記に必要な書類を引き渡すこととされた。なお、契約書第三条(引渡義務)には、不動文字で「本物件を引き渡すとともに、所有権移転登記手続一切を完了しなければならない。」と記載されていたが、「本物件」が「当該建物」と書き直され、所有権移転登記手続についての記載が末梢された。

ところで、本件売買契約の時点において、本件家屋の躯体はほぼ完成していたが、内装工事、外回り工事等は未了であった。客室内装工事については、控訴人磯部俊行が本件売買契約の日である昭和六二年一二月二九日に幸子の名で株式会社神奈川電話サービス(代表取締役・田所公明)に代金一億二九一〇万円で発注し、同会社に施工させることにし、代金の支払は直接幸子から同会社に支払うこととし、本件売買契約の代金総額八億円のうち幸子が支払義務を負うのは前記客室内装工事代等一億二九一〇万円を差し引いた六億七〇九〇万円であり、スペースクリエートは右一億二九一〇万円についての請求権はないこと等を確認し、ただ、右会社に対する支払は形式上はスペースクリエートを経由して行うことを、幸子とスペースクリエートとの間で合意し、右同日その旨の念書を取り交わした。そして、幸子の死亡後昭和六三年二月一九日に、スペースクリエートと控訴人らとの間で、客室内装工事一億二九一〇万円の分については一月一五日現在未着工であるので、幸子に替えて当該ホテルの経営に当たるダイワエンタープラズにて行うことを合意する旨の「合意書」と題する書面が作成された。」

三  同一六枚目表八行目中「甲一号証、」の次に「六、七号証」を、同九行目中「四ないし七」の次に「、五号証、当審証人田所公明の証言」を加える。

四  同一六枚目裏一行目中「また」から三行目中「支払われた。」までを「また、内装工事代金については、前記の合意に従い、ダイワエンタープライズからの支払として同年二月一九日から七月ころまでの間に数回に分けて控訴人磯部俊行から株式会社神奈川電話サービスに対し支払われ、形式上本件売買契約による支払がされたようにするために各支払代金に応じてスペースクリエート名義の領収証が作成されたが、その宛名はダイワエンタープライズとなっている。」に改め、同六行目中「押印し、」の次に「建築主としてスペースクリエート、」を加え、一七枚目表三行目中「八」の次に「、当審証人田所公明の証言」を加え、同裏二行目から八行目までを全文削る。

五  同一九枚目表六行目中「なお」から八行目中「としても」までを、「なお、前記のように、本件家屋の内装工事の発注及び代金の支払の実際は幸子ないしダイワエンタープライズの名で控訴人磯部俊行が行ったこと、そして本件売買代金のうち内装工事代金一億二九一〇万円については、ダイワエンタープライズはこれを差し引いた金額の支払義務を負い、スペースクリエートはその請求権がないことを互いに確認している事実が認められるのであるが」に改め、二〇枚目表一行目中「いたとしても」を「いたからといって」に改める。

六  同二二枚目表四行目中「とおりであり、そうであるとすれば」を「とおりである。また、契約書において土地の代金とされている一億二九三六万九八〇〇〇円を上回る三億六〇〇〇万円の手付金が支払済みであるからといって、当然に本件売買契約の時点において本件土地だけを切り離して所有権を移転するとの合意があったとみることはできない。そうすると」に改める。

七  同二三枚目裏八行目中「ここで」から一〇行目中「すぎないとも」までを「右供述は、本件家屋の表示登記のための書類を引き渡したことがすなわち本件家屋の引渡しの履行に当たるとの単純な理解を前提とするものとも」に改める。

八  同二四枚目裏五行目末尾の次に「控訴人らは、所有権移転の時期については税法上の観点から被相続人が相続開始時において「所有している」と言い得るだけの支配力を有していたかどうかによって判断すべきであるとして、本件においては幸子において既にそのような支配力を有していたと主張するが、にわかに採用し難い。」を加える。

九  同二五枚目表一〇行目中「乙三号証」の次に「及び当審証人倉田和利の証言」を加え、同裏六行目中「しなかったことをもって」を「しなかったことのほか、国税局係官が控訴人らを何回も東京国税局に呼んで調査をしたこと等、国税局係官の関与について具体的事実を挙げて」に改め、同九行目中「発言の多寡等」を「発言の多寡その他関与の態様等」に改める。

以上のとおりであって、控訴人らの請求を棄却した原判決は相当である。

よって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 丹宗朝子 裁判官 新村正人 裁判官 齋藤隆)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例